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産経新聞 2000年1月7日号 ■

古代人と木のかかわり
新鮮な切り口で読み解く文学史

 古来、人は樹木とさまざまなかかわりをもって生きてきた。ときに祈り、ときに愛で、ときに切り倒すことに命をかける…。そうした古代の人々の樹木に対する思いを、神話や説話、物語に探った“木の文学史”が出版された。京都大学名誉教授、佐道健さんが書いた『雅びの木─古典に探る』。
 日本の自然を記した最初の書物『魏志倭人伝』をはじめ、『日本書紀』や『今昔物語』に残された巨木伝説、『枕草子』に登場する都を飾った花の木のエピソードなどを引用しながら、往時の人々の暮らしに木が果たした役割を考察している。
 著者の佐道さんは木材工学の専門家で、「大阪木の何でも相談室」室長。「古代に<つき>(槻)と呼ばれていた木が、いつごろケヤキと呼ばれるようになったのか」という疑問を調べるうち、人々が木に寄せる思いの変化に魅かれるようになった。
 佐道さんによれば、「ケヤキ」という語がはじめて辞書類に出るのは室町時代。江戸時代にケヤキに「欅」の字があてられるようになり、欅と槻が同じものであると認識されるようになったという。
 専門である木の植生や木材の特徴・用途の解説も詳しいが、樹木という切り口で古典を読み解く視点が新鮮。『源氏物語』の「賢木」や、「帚木」といった巻名に込められた意味の深さを改めて考えさせられる。

詳しくは 雅びの木のページへ