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■ 山林 2000 年 6 月号 ■
木材について考える古寺巡礼案内の好著である
本書のまえがきの冒頭にある「国宝建築物はすべて木造である」という文に接し、日本は木の国であったことを今更ながら思い知らされた。世界の著名建造物の材料の大半は石、煉瓦などの無機物である。
日本の国宝建築物は全国で125カ所、109件あるというが、本書には非公開、撮影禁止のものを除き、北は中尊寺金堂から南は宇佐神宮までほとんど全ての国宝建造物の写真が網羅されている。
本書の著者は森林総合研究所木材利用部長を経て、本年信州大学を退官された木材の研究者である。国宝建造物を歴史、建築、芸術の対象とした著者は多いが、本書のように木材材料の見地からのものは寡聞にして知らない。古い建造物の表情から木材の性能を生かした使い方を思索する著者の解説は現代にも通ずる真理を含んでいる。
国宝の写真集といえば土門 挙氏の「古寺巡礼」を思いうかべるが、この本は芸術家として対象への迫り方が息苦しいほどであった。その点、本書は楽な気分で楽しめる写真集である。プロではないので写真の出来映えを云々必要はないが、それよりもなにより木造建造物にたいする著者の並々ならぬ愛着を読みとればそれで充分である。
写真の一つ一つにその時々の短い見聞記がつけてあり、林業関係者にとって木材について考える古寺巡礼案内の好著であるが、同時に木材を離れての国宝探訪案内として楽しむのもよい。
詳しくは
国宝建築探訪のページへ
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