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信濃毎日新聞 3月4日号 ■

木の専門家の視点

信大農学部の中野達夫教授(65)=木材利用学=が、全国の国宝建築物を写真集「国宝建築探訪」にまとめ、出版した。120カ所にある209件の国宝を訪ね、何百年もの間、朽ち果てることのない木材の種類や加工法などを紹介。木の専門家の視点からとらえ、観光ガイドとは違う建築の魅力を伝えている。4日には、同学部で「国宝建築はすべて木造だった」と題した最終講義をする。
 非公開や撮影禁止の場所以外は、すべて写真を載せた。3年ほど前、講義の準備のため国宝建築について調べたのが、“全国行脚”のきっかけ。夫人と一緒にマイカーで旅行し、山陰から九州、四国を4泊5日で一回りする強行軍も体験した。
 1957(昭和32)年に京都府立西京大学(現同府立大)農学部を卒業後、広島県職員として造林業などに従事。63年から農水省林業試験場(現森林総合研究所)に入り、国内や熱帯に育つ木の性質について研究を重ねた。94年に信大農学部教授に着任し、演習林長として樹木の香りをかいできた。
 3年という短期間で100カ所以上の国宝を回るパワーの源は、「“材木屋”として古い木を見ておきたい」という思い。建築後約1300年経た法隆寺には、樹齢千年を超える木が使われているという。「樹齢を重ねた木は腐りにくく、長持ちする」
 ところが、国内の山は現在、太平洋戦争中や戦後復興期の木材需要の影響で、戦後に植えた樹齢40年ほどの木が多いという。「本当は、まだ切る時期ではない。きちんとした木材を作るには、100年単位で考えていかないといけない」。日本の戦後は樹齢百年の木が育つまで終わらない、と話す。
 今後は、世界遺産に登録されている木造建築や、世界の大木を訪ね歩くという大きな夢がある。中国をはじめ、台湾、東欧、米国…。「お金がないよ」と苦笑いしながらも、探求心はますますおう盛だ。

詳しくは 国宝建築探訪のページへ