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木材保存 2000年 12月号 ■

木質材料の製造に係わる人だけでなく、木質材料を建築などに使用する立場の多くの人々に読んでもらいたい。

 この本はシロアリについて、木材を利用する立場から書かれたものであり、著者は京都大学木質科学研究所劣化制御学研究室を中心に、現在第一線で活躍中の9人の専門家である。内容を見ると、当然ながら木材及び木造住宅のシロアリ被害や被害の防除について、詳細にしかも平易な用語で語られている。また、それだけでなく、シロアリの生態や生理、地球環境に果たしている役割等にもふれており、生物学的な興味も満足させうるシロアリ學の総合的な一般向け解説書となっている。同じ様な内容に日本しろあり対策協会の『しろあり及び腐朽防除施工の基礎知識』があるが、これは防除士養成を目的としており、専門用語も多くまた入手困難で一般向けとは言い難い。

 ところで、本書の第1章第2節に阪神・淡路大震災で被害を大きくした原因の一つにシロアリ・腐朽等の生物劣化をあげ、幾つかの調査報告の内容を紹介しているが、木造住宅倒壊に関連して、過去に震災直後から1ヶ月間の新聞報道を追跡したことがあり(木材工業、50、277-281、1995)、本を読みながら、ある種の想いが浮かんできた。震災直後の報道では、生物劣化による被害拡大にふれたものは極めて少なく、重い瓦屋根を原因とするものが圧倒的に多かった筈である。2×4等のプレハブ業界のはしゃぎにも似た喧伝と在来工法の腰の引けた対応が思い出される。しかし、科学的な調査が行われた結果、やはりシロアリや腐朽等の生物による劣化が被害拡大の一因であると認識されるようになったのであろう。なお、著名な建築学者による談話、『木造住宅は築30年のたてば補強しても強度を保てない。直下型地震に備えるには立て替えしかない』が掲載された折り、これは木造の全面否定であり、もし多くの建築家がこれと同じ認識を持つならば、構造用として木材は排除されて行かざるを得ない感じがしたのを思い出す。この本の範囲外であるが、使っている間は虫に食われず腐らず、使い終わったら速やかに虫に食われ腐る、といった矛盾を統一的に行いうる方法はないのであろうか。

 最後に、木質材料の高度徹底利用の立場から材料の製造に係わる技術者や技術を学ぶものだけでなく、木質材料を建築などに使用する立場の多くの人々にこの本を読んでもらいたいと思う。

詳しくは 住まいとシロアリのページへ